合成画像の正しさについて
吉 田 勝 行
次の図は,明らかにマチガッテいます! しかし,どこが間違っているのでしょうか?
デジカメとフォトレタッチソフトで,誰にでも簡単にこうした画像の合成が可能になった現在,こんなマチガイをしないで済むよう,ここでは自衛のための図学の勉強です
この画像は,中央の建物がCGで描かれた後,敷地付近を撮影した写真に取り込まれて合成された結果出来上がった,建物の完成予想図です。しかし,当該建物は,傾いているように不自然に見えます。図学の世界でよく知られている透視図の原理を踏まえないで合成したためです。
では,何処が間違っているのでしょう。
説明の都合で,図中に補助線を入れてみました。背景の向かって右側の建物の外観を構成する水平な直線の消点は,2点とも当然のことながら水平線上にありますが,当該建物の床ないし窓に係る本来水平なはずの直線の消点は,この水平線から外れています。
以上は,図学的に指摘出来る確実に間違っている点です。
次にもう一つ,建築計画学的には,当該建物のガラス面は川側に面しているはずで,向かって右隣の建物の川側の立面とほぼ平行のはずです。したがって,当該建物のガラス面に係る水平な直線の消点は,向かって右隣の建物の川側の立面に係る水平な直線の消点とほぼ一致しなければおかしいわけです。
写真は,次の図に示すように,レンズを通った光がフィルム面で像を結びますが,それを図として化学的(銀塩写真)ないし電気的(ディジタルカメラ)に取り出したものです。
これに対して,透視図は,次の図に示すように,画面上に眼で見える通りに描く図法です。
一見写真と透視図法で得られる図は違うように見えますが,次のように重ねてみると同じ図が得られることが理解出来ます。
すなわちフィルム面に写る図は,レンズの中心を視点とし,フィルム面を画面とした時に得られる透視図(正確には透視投象)というわけです。
視点から空間の一本の直線を眺めるとその無限遠を眺めた時の視線と画面の交点を,その直線の消点といいます。
互いに平行な直線は,そのどれを視点から眺めても,無限遠を眺める視線は同一の直線となります。したがって互いに平行な直線の消点は同一の点になります。いいかえると,互いに平行な直線の透視図は,画面上同一の消点に集まります。
空間で水平な直線の無限遠を眺める視線は,画面上で水平線上を通りますから,空間で水平な直線の消点は水平線上にあるわけです。これがポスターに掲載の図がマチガッテいる所以です。
Photo Shop を使って修正して見ましょう。次のような図が出来上がります。
補助線を消して完成させたのが下の図です。このように自然な感じに見えるわけです。